前章では峠の走り方について重点的にお話をしました。今回は、夏休みに長期ツーリングを控えた人も多いであろう、ということで、悪状況下での走り方、注意点に言及し、悪状況にどのように対応すべきか、考えてみよう。

 

Z.悪状況下での走り方

 ツーリング中は、楽しいことばかりとは限らない。長い間走っていれば、雨の日も、風の日も、暑い日も、寒い日もある。日が暮れて夜になっても、目的地まで走らなければいけないこともある。そんな時は、辛いばかりでなく、より危険であることも思い出そう。

 考え得る状況下において、その対応策を挙げてみよう。

 

(1)いやだなあ、雨だよ。

●雨が降ると、体は濡れる。体が濡れると、体温が奪われ、不快なだけでなく、疲労も増す。まずは雨具が必要である。ポンチョは手軽で良いが、いまいち漕ぎ難い。やはり動き易さから言うと、上下揃いの雨具が良い。雨や風は通さず、汗や蒸気は発散させるGORE−TEX製の雨具は優れモノであり、お勧め。値段はそれなりにする(2〜3万円程度)が、雨の日の快適さには替えられない。

●視界が悪くなるので、眼鏡(グラス)をかけてたら、頻繁に拭くなど、視界を確保する必要がある。

●雨の日は、路面が濡れて滑りやすくなる。カーブの時、止まる時は要注意。ラインやマンホールの上は、極力走らない。路肩も傾いているので、転び易い。また、踏切を渡る際は極力線路と垂直に進入しないと、線路にハンドルを取られて大転倒につながる。踏切内と言うことで非常に危険。

●リムも濡れることによって、ブレーキが効かなくなる。悪状況下全てに言えることだが、止まれないようなスピードは出さない。また、ブレーキシューが減って、リムが真っ黒になるので雨が止んだら掃除をすること。ブレーキの効きを悪化させ、シューの減りを早めてしまう。

●止まれないということに関連して、集団走行時には、普段以上に車間を開けること

●ランドナーを除く車種には泥よけが付いていないので、雨の日に走ると、自転車が泥だらけになり、背中に一線が描かれてしまう。ひどい時には、顔にまで泥水が跳ね上がる。前輪からの跳ね上げは、ダウンチューブでうまく防ぎ、後輪からの跳ねは、諦めるのが一番早いのだが、往生際の悪い人には、rain−tailという優れものパーツが存在するので、これを使うのが良い。(自分が背中を汚しているのに、これを付けて涼しい顔をされると、裏切られた気分になる。)
 また、ザックも濡れてしまうので、ザックカバーも必需品。キャリアにフロントバック、サイドバックを付けている時(いわゆるツ―リングフル装備)にも、バッグにカバーをしたり、中のものをビニール袋に入れるなど、荷物の防水装備が必要になる。水の浸透性を甘く見ているとひどい目に遭う。

●雨具については、裾がひらひらして、チェーンリングに絡まったりするので、バンドで止めた方がよい。また、雨具のフードだけでは、目に雨が入って来るので、つば付きの帽子があるとよい。(GORE-TEXの帽子がお勧めですね。)

 

(2)うひゃあ、ひどい風だ。
 世の中に吹く風がすべて追い風なら、こんなに楽なことはないが、世の中そんなに甘くはない。向かい風が吹くと、半端な峠の登りよりよほど辛い。自転車の本当の宿敵は、勾配ではなく、風であるということを思い知らされてしまうもの。

 しかし、ここで言いたいのは、向かい風が辛いということではない。向かい風なら、頑張ればよいのだが、気を付けて欲しいのは、横風。海沿いの道、山の切り通し、それから、大型トラックが追い抜く際の横風にハンドルを取られないように。横風でふらふらしてしまうと、車に引っかけられたり、転倒、転落の元になります。 風を受けないためには、姿勢を低くするのがよい。

 

(3)夜間走行(ナイトラン)

 ナイトラン、と言うと、ロマンチックな響きがあるが、実際はそればかりでもない。夜には、危険がいっぱい。注意事項を箇条書きにしよう。

@スピードを落とす。

 夜は、昼と違って、周りが見え難い。同時に、周囲からも確認され難い。従って、何か危険が起こった時(路面の急な変化、前方からの飛び出し、障害物などなど)に対応できるように、スピードを控えること。また、夜間は周りの状況が見えないので、昼間と同じスピードでもより速く感じられることも覚えておこう。

A注意力が散漫になり易く、疲労もたまり易い。

 夜間走行になる時は、たいていは昼間から走り続けていて疲れていたり、空腹であったり、目的地が近くなってそわそわしている場合が多い。また夜間走行自体も、非常に神経を使うので疲れる。そんな時には集中力がなくなっており、事故が起こる確率も高くなる。こまめに休憩を取るなどして、注意力が落ちないように、普段にもまして慎重に走ろう。

Bライト、リフレクター、テールライトなどの装備は大丈夫か?

 以前にも述べたが、ライトは、路面を照らすためというよりは、車その他に対して存在をアピールするものとして不可欠。同様の理由で、テールライトも絶対必要。冬季などは、ナイトランの時間が長くなる可能性もあるので、(冬季に限らず)替えの電池も携帯すべきである。(ニカド電池など、充電式電池は、長期ツーリングでも充電して何度でも使えるし、経済的。超オススメ。)最近では、シューズや、ザック類にもリフレクターが付いているものが多いが(Jack Wolfskinのバッグには、これでもか、というくらいに付いていて、有り難かったりする。)なるべくそういう安全思考の格好をするのも一つの手。
 メットグローブについては、もういまさら言うまでもありませんね。

C夜間は車も飛ばす!!

 真夜中に走るということは、あまり頻繁にあるわけでもないが、人によっては、そういう走りをすることもあるだろうからちょっと注意。真夜中になると、車の数も少なく、車は一般国道でも高速道路並みに飛ばしてきます。また、夜行便の大型トラックが多いのも事実。向こうはこんな時間に自転車が走っているなんて思っていないので、余計危険。とにかく、確認され易い装備で、確認され易いところをゆっくり走る。
 走り屋の多い夜の峠も危険。一緒にトマトにならないように気を付けよう。(としか言いようがないですな。)

Dなるべく夜間には走らないように計画を立てる。

 はっきり言ってナイトランは、昼間に走るより数倍危険。真夏のどうしようもない時期に、昼間は走ってらんないから夜走るとか、ノンストップランとか、通学など、やむをえない(或いは個人的な好み)場合を除き、なるべく夜間に走らないよう計画を立てるのが、最善の方法。どうせ走っても、景色が見えないから、もったいないし、つまらないではないか。テントツーリングなら、夜が明けてから走ればいいや、という余裕も欲しい。(私にそれがあるかどうかは、別として。)
走るにしても、あまり長時間走らないようにすることです。

 

(4)キリじゃ。何にも見えない!

 山の上などでは、霧が発生していることがある。景色がいいところに限ってこれだから困る。注意点は雨の場合と類似しているが、

●視界が利かないのだからスピードは出さない。車間も開ける
●車から確認し易いようにライト類を点灯した方がよい。
●体温管理もしっかり。
●景色が見えないからといって、不機嫌にならない

このくらいでしょうかね。

 

(5)暑い、焦げる、沸騰する、蒸発するぅ!!

 暑いなら走らなけりゃいいと思うのだが、夏休みがあるから仕方がない。
暑いと何が恐いか?熱射病、日射病、脱水症状である。その対策について。

 

@水分をこまめに取る。

 こまめに飲むためにも、自転車用のボトルは必携品。一年生の人は、自転車を購入する時に、一緒にボトルケージとボトルを購入してしまうことを勧めます。ボトルについて言うならば、夏場は500ml用では足りません。少なくとも、750ml用か、1.5lペットボトル用のケージを購入するよろし。
 こまめに取るように、ということが重要。いっぺんにがぶがぶ飲んでしまうと、かえってバテてしまう。飲まずにいても、脱水症状になってしまう。(んー、難しいっ。)
 また、峠道などでは、水分補給ポイントがないので、事前に十分な水分を確保しておく。登っている途中で水がなくなった、では、しゃれにもなりません。
 また、大量に飲むなら、ポカリ等のスポーツドリンクの方が、吸収され易く体の負担にならない。

A頭を直射日光から守る。

 峠の登りとかで、暑くてメットなどかなぐり捨てたくもなるが、やはり直射日光に当たると日射病が恐い。メットを被るか、登りなどでも何か直射日光を防ぐ手段を講じること。時折、濡れタオルで冷やしたり、水をひっかぶるというのも気持ちいい。

B無理をしない。

 夏の昼間は、アスファルトの照り返し、自動車の排気熱などで、実際の気温以上に暑くなる。無理をして走ろうとせず、昼は昼寝でもして休んで、涼しい夕方に走るなど、余裕を持った方がいい。まあ、余裕なんて言う前に、ヤル気が消滅する方が先か。

C日焼けはやけど!

 夏の紫外線は強い。(実際には、5月頃の紫外線が一番強いらしい。)肌を焼くのもいいけど、肌に優しくないのでほどほどに。日焼け止めを塗るのがベター。なお、曇りの日でも日焼けはしますので、油断なきよう。(→ら族)

 

(6)う〜、さむい、寒い。

 寒いなら走らなけりゃいいと思うのだが、冬休みがあるから仕方がない。
寒いと何が恐いか?自転車は基本的にかなりの運動量を伴うので、乗っていれば基本的に解決する問題だが、冬の寒さとは別に、夏でも、標高の高い所、緯度の高い所(北海道とか)、雨天など、一時的なものに対する備えの方が重要だと思う。防寒具、雨具を持っていかないと、寒さでハンドルを持つ腕が思い通りにならなかったり、指がかじかんでブレーキを握れなかったり、風邪をひいたり、異常に体力を消耗する。また、キャンプをする時など、夏でも夜は冷え込むし、春先には、霜も降りるし雪も降る。寒い野宿の辛さは経験しないと解らない(?)が、やはり、最低限の防寒対策はすべき。
 ちなみに、フリースは防寒対策に非常に有効。フリース+雨具で、たいていの寒さはしのげる。軍手(手袋)は、忘れ易い盲点。ストッキングの生地を用いた手袋は、薄手で暖かい!

 

(7)雪、凍結路。

 自転車にチェーンを巻いて、というのは冗談ではなく実際に出来るのだが、普通はそんな装備は持ち合わせないので、とにかく言えることは、無理をしないこと。積雪のある山道などで、遭難など、たまらない。(過去に何度か、未遂事件あり。)それなりの装備と、経験を積んでいない限り、状況を見て、中断するなり、引き返す勇気も必要。

凍結路といっても、判り難いことが多く、真冬でなくても、晩秋の峠道の日の当たらないカーブや、初春の残雪のあるような道など、伏兵的に凍結していることがある。要注意。

 

(8)悪路

 交通量の少ない山道、林道、3ケタ国道などでは、舗装してあっても、簡易舗装であったり、落石だらけであったり、ひどい時には崩壊していたりする。また、一級国道でも、大型車の交通のために轍が深かったり、路肩が砂利だらけであったりすることもある。また、トンネル内で、突然舗装が悪くなることもある。(知る人ぞ知る、釜トンネル。)その対策を簡単に。

●落石を踏まない。レーサーは勿論、MTBでも、落石は尖っているので、パンクしない保証はない。しかも、カーブ等に溜まった落石を踏んで滑ることもあるので、それも注意。自分の走る路面には十分に注意し、余計な障害物を踏まない。それだけでパンクは半減する。また、空気圧も適正値にしておくこと。(低過ぎる人が多いような気がする。)

●ガードレールのない道では、転落せぬようスピードを落とす。路肩も弱いので端に寄り過ぎない。

●狭い道では、ブラインドから飛び出す対向車に注意。

●轍の深い道では、ハンドルを取られぬよう、轍の中を走るか、完全に外すかする。

トンネル内は急に暗くなり、路面が見えなくなるので、スピードを出さず、ライトを点灯、路面に十分注意。砂利が溜まっていたり、穴があいていたりと、舗装は外より悪い。

 

(9)休憩の取り方

 長時間の走行は、注意力の散漫を招く。ずっと走り続けていると、眠くなって、どっかに突っ込むこともままある。(自転車にも居眠り運転はあるさ。)休憩のタイミングは、人により異なるのであろうが、最低でも1時間に1回は取る。(20kmで一回というのもありですが、コースにも因るし。)

 その際、積極的に水分と食糧(甘いもの、カロリーの高いもの)の補給をすること。何度も繰り返すが、喉が渇いてから、腹が減ってから、では遅い。少しづつ、というのが最も効率的な補給法。次の区間の道順を地図で確認するのもよい。

 

(10)最後に

 ツーリング中には、必ずといっていいほど悪状況に遭遇します。上に挙げたようなことが殆どでしょうが、この他にも、それこそ想像もしなかったことが起こるかもしれません。そんな時、一番重要なのが、無理をしないこと、焦らないこと、それから、事前の準備は万全に、ということです。ハプニングがあるから、ツーリングは楽しいのです。悪状況を克服した満足感があるから、ツーリングは飽きないのです。上記のことを少しでも参考にして、悪状況下の安全走行に役立てて頂ければ、これ幸い。

 

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